とことこと

OCTOBER 26

女性能楽師から学ぶ“素敵”。(前編)

フランス発のコトニエなのに、日本の伝統芸能の能楽の記事?そんな声が聞こえてきそうですが、今回は観世流能楽師・寺井千景先生の登場です。“え?女性の能楽師さんがいるの?”そんな疑問を思う方もいらっしゃるのでは?早速いろいろ伺ってみましょう。

取材・文:土本真紀
写真:本多康司

寺井千景先生
能楽観世流シテ方。父である寺井栄(観世流職分)に師事。3歳で仕舞、老松にて初舞台。妹も能楽師として活躍している。ずっと男性によって演じられてきた能楽の世界にも、戦後から女性能楽師が誕生。現在は能楽師の約1割ほど、女性が活躍している。

360°すべて、油断せず。

日本が誇る伝統芸能である能楽。なんと今から約700年前の室町時代にさかのぼる世界最古の舞台芸能と言われ、ユネスコの無形文化遺産にも登録をされています。

「能楽の舞台では、登場から退場までずっとお客さまに見られています。幕がないですから、すべてを丁寧に、品よく見せるということが重要です。演目に合わせて装束をつけていますが、お客さまの前に出てから戻るまで、なるべく同じ格好でいなければならない。雑な歩き方や粗い動きでは、装束が乱れてしまいます。

実は、舞台から戻り幕に入ってすぐのところに“鏡の間”という場所があって、そこで戻ってきた自分の装束姿を一度チェックしてから能面をとるという決まりがあるんです。舞った後の自分の姿の乱れを確認して、そこでやっと終わるわけです」

能楽とは、隙があってはならない芸能。そうおっしゃる千景先生。確かに、常にまわりの空気を張り詰める必要があります。考えてみれば、能楽の舞台は前からも横からも、場合によっては後ろからも、360°周囲から見られているわけですから、油断はできません。

前回、スタイリストの武田さんも成功するスタイリングのコツとして「鏡を明るいところで見て!」とおっしゃっていましたが、自身を見つめる鏡、を持つことは、外見、内面の両方を磨くために必須なのでしょう…。

「また、能面のようなという言葉を、表情がないという意味で使われることが多いようですが、それはとても残念なことです。パッとみてそのように思われるかもしれませんが、舞台の光の角度や演者の着ている装束、体を少し傾ける、等で豊かな表現が生まれています。

このような微細なところに宿る豊かさを感じられるのは、素敵なことではないでしょうか? 観世流の能楽師はみな、同じ型でそれぞれの演目を演じますが、それでも、動きのタイミングがほんの少し違っていたり手の角度が微妙に異なるだけで、見え方が変わってきます。

能楽は世襲制ではありませんが、やはり私の型は師事した父に似ていると言われますね」

結果をすぐに求めない姿勢。

実は私、土本も数か月前から能楽のお稽古をつけていただいている新米弟子なのですが、今の忙しい時代、お稽古事を1つはした方がいい、と教えてくださったのは千景先生のお母さまでした。

「1年、3年、5年、10年、20年とスパンの長い視野で技を習得していくのが、能楽のお稽古です。昨今はどんなことも、すぐに結果を求めがちではないでしょうか?

自然な流れで、長い目を持って、すぐに結果を求めないで欲しい。お稽古事というのは、長く続けることが第一。時間を作るのは自分でしかできないですし、どんなに忙しい仕事をしていても自分で時間の配分をすることは大切です。

能楽でなくても、何か長く続けられるお稽古事を持つことは、心の栄養になると思いますね。3歳の時に初舞台に立ってから、もうずいぶん経ちましたが、まだまだ学ぶことばかりです」

舞台に立つ、幼少期の寺井千景先生。

次回、後編に続きます。お楽しみに。

 

撮影協力:横浜能楽堂
http://www.ynt.yaf.or.jp
日本の古典芸能のアーツセンター。能を始めとする日本の古典芸能の上演だけに止まらず、海外とのコラボレーションにより新たな作品も生み出している。また、初心者でも気軽に足を運べる解説付きの公演や、能・狂言のワークショップなども開催。

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