とことこと

JUNE 08 / 普通のパリ

新しい朝。

91歳になる祖母は、『New Morning』というジャズクラブのオーナーだった。

まだ小さかった私はチェット・ベイカーとアーチー・シェップのライブをえらく気に入っていた。

観客はミュージシャンのことを、聖職者を崇めるように見る。ミュージシャンは自分のもちうる全て、魂を観客に与える。

ライブが終わると母が迎えに来るまで、『New Morning』は兄との遊び場になった。

私はいつもバックステージの赤いヴァイナルのカウチで眠ってしまう。

その時の感覚を鮮明に覚えている。

眠りこけた私を『ドアマンのケサ』がタクシーまでかついでくれる。

ドアマンのケサは、私が小さい頃から、お祖母さんとNew Morning を守ってきた、私のヒーローであり、初恋の人。彼の名前が日本語で『今朝』だときき、嬉しい。

世界は完璧だった。

「世界は振動で繋がっていて調和がとれている」

安心していた。

エジプトで生まれ育った祖母は、ジャーナリストになった。

その頃、エジプトでは言論活動に様々なジャンルの人たちが、信念をもって向き合い、ジャーナリズムは希望で輝いていた。

その後ニューヨークの国連で働いていた祖母はLIFE magazineのフォトグラファーだった祖父に出会った。

フォトジャーナリストだった祖父の撮った写真をみると、彼のものの見方を通して、彼を理解することができる。残してくれた財産だ。

祖父はもういないが、祖父が撮ってくれた家族写真が残っている。

毎日、ドキドキしていたい。

彼の目を通して世界に接することができるのに、感謝している。

テキスト:インジー・マソトゥ

ーNEWSー
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