とことこと

APRIL 20 / 母と娘の森

海外生活をしていると、より日本文化について興味が湧いてくる。

フランス人の友人から「禅とはなに?」とか、「わびとさびの違いは?」なんて質問をされると、返答に困ることも度々。

改めて自国文化についての理解不足を実感する。真の国際人とは自国の文化をきちんと知って、それを正しく伝えられる人であるはずだ。

そんな思いからいつか日本の伝統文化を学び直したい、という思いが募った。

そんな中、いまから7年前ほど、京都からいけばなのお家元のかたがパリにいらっしゃるから一緒にお食事でもどう、というお誘いがあった。

お家元だけに、いつもお着物を着て、礼儀作法にも厳しく、どこか近寄り難いかたなのかな、と想像していたのだが、現れたのは颯爽とパンツを着こなすサバサバとした印象のかただった。

お話しを伺っているうちに、華道の魅力にぐいぐいと引き込まれていった。「京都にいらっしゃるときは、一度体験レッスンをしてみては」というお誘いのまま、帰省先が大阪ということもあり、早速京都のご自宅にお邪魔してお稽古をしてもうことになった。

それからお花の世界に魅了された。

先生がパリにいらっしゃる度にレッスンをしてもらい、日本に帰省するときはなるべく先生にお会いするようになった。

とはいっても年に数度のお稽古では上達するすべもなく、覚えた先から身につかぬまま忘れるという事態も。

現在習っている流派は京都の稼働表現派。大正時代から続く自由化を中心にしたいけばなだ。

もっときちんとお稽古したい、そんな希望を伝えると、昨年、先生が京都でのいけばな合宿を企画して下さった。文字通り、朝から夜まで花尽くしの4日間が続いた。自分の中で、なにか前進するものを感じる。たとえ華の道は長くとも。

パリでいけばなをするにあたって最初に突き当たる問題が花材選びである。

いけばなでは形が個性的な枝があるとよいのだが、フランスの花屋でまず枝ものが手に入りにくい。

桜や柳など手に入ることもあるが、そもそもブーケに使用するので、枝ぶりがそこまで面白く無いものが。

ということで、鉢植えごと買うか、たまに街路樹を市の職員がカットしているときに遭遇するので、その際一部おすそ分けしてもらうか。

パリのサントノーレ近くにある花屋さん、カトリーヌ・ミュレ。個性的なブーケが売りで、色使いがいつも参考になる。

花は輸入大国の日本と同じように、とまではいかなくても、そこそこ豊富に揃う。花屋もメトロの一駅には必ずひとつあるくらい、充実している。

バレンタインや母の日以外にも、ちょっとした機会にお花を贈る習慣があるフランスならではである。

旦那さんが奥様に、毎週ブーケを贈るという話も稀なことではない。あと誰かのお家に呼ばれたときに手土産としてブーケを贈るもの定番。花が暮らしに根付いているなあと感じさせる。

たまにマルシェ(朝市)で面白い花に出会うことも。普段野菜を売っている農家の直売スタンドが、季節になるとお庭の花を売ってくれる。一度マーガレットの花を買ったときに、茎に蔦が絡まっていて、自然のまま出荷されたのだなあ、なんて思ったことも。

今年の4月にあった華道京展で。先生と造園家のお弟子さんとの共同作。いつかこんな花がひとりで活けるようになりたい。

食、アニメをはじめ、現在フランスでは空前の日本ブーム。そんな流れからいけばなもブームにならないかと期待。

ただいけばなはそもそも床の間にあってこそのもの。床の生活ということから見る視点も低く、後ろから見ることがないため、360度回転させてみることがない。

テーブルに置く場合はその例でなく、そのあたり、いかに日本のいけばなを西洋の生活空間に融合させるかが難しい。

ジャポネスクが再びパリで花咲く日を夢見て、いけばなをパリで続けていけたらと思う。

Text Hiroyuki Morita

LINEで送る