とことこと

OCTOBER 27 / 普通のパリ

パリ・コレクションとニュイ・ブランシュ(パリ白夜祭)、パリアートフェア。10月のパリは芸術色の絶頂。パリのトップクリエイティブ界で活躍するインジー・マソトゥのフレンチシックな目線は今月のパリをどう見た?

文:田中洋子 写真:インジーとその周りの人

グラン・パレ(Grand Palais)は1900年のパリ万博万国博覧会のために建てられた。Le Nef(本堂)はラグジュアリーブランドのファッションショー会場ともなる。

10月のパリは見逃せない。パリコレで毎年ニュースを飾る、パリ・ファッション・ウィークに京都でも開催されているパリ白夜祭。そして日本ではまだあまり知られていないのだが、毎年世界中からアートを買い付ける人や、アーティストたちが、パリに一斉に集結する、国際現代アートフェア、FIAC(フィアック)が盛大に開催され、芸術の都パリを感じるイベントで溢れる月。

今年の秋のパリアートフェアは、シャンゼリゼ通りとコンコルド広場の中間にあるグラン・パレをメイン会場とし、世界中から勢いのある189のギャラリーがブースを構え、アート作品を展示。今年もグラン・パレは、豪華なアートマルシェとなり、パリジェンヌの間ではみんな自然とアートの会話となる。

動く彫刻「モビール」で知られるアレクサンダー・カルダー(Alexander Calder)の作品もマルシェに!日本でも人気アーティストだ。

田中:この秋のパリは、どうだった?

インジー:フランス人はサマーバケーションをがっつりとるから、そのツケがまわって秋はみんな仕事で大忙しになるの(笑)。

田中:そんな中でパリの10月はアーティスティックな月となるんだね。アートを満喫した?

インジー:先週開催されたグラン・パレでのパリアートフェアは大満足だったわ。

田中:日本ではパリアートフェアは、あまりニュースとして入ってこないんだよね。どこのギャラリーがよかった?

インジー:イタリア・ナポリのギャラリーAlfonso Artiacoがとってもよかったのー。

Alfonso Artiacoギャラリーのブース。プティ・パレやアレクサンドル3世橋と同時期に建てられたグラン・パレは、大胆なガラス屋根と鉄製のアール・デコの装飾に圧倒される。シャンゼリゼ=クレマンソー駅近くにある。

田中:イタリア・ナポリから出展してるギャラリーが印象に残ったって、なんか気になるー。

インジー:1980年代からやってるギャラリーよ。独特な存在感だった。すごいエネルギーとパッションを感じたの。

田中:そのギャラリーで特に印象に残ってるアーティストは?

インジー:Lawrence WeinerとJuan UsleとNiele Toroniがよかったわ。

田中:Lawrence Weiner(ローレンス・ウェイナー)とNiele Toroni(ニエーレ・トローニ)の作品は、私もなんか好き。OPOSのスタジオのインテリア・デコレーション用に買ったら?

インジー:(笑)欲しいねー。仕事、もっと頑張りまーす。

そういえば、インテリア・デコレーターのフランソワ覚えてる? (François Champsaur)

田中:うん。南フランス出身のインジーの古い友だち。

インジー:パリアートフェアの間に、フランソワのスタジオに遊びにいったの。本当にアーティスティックで繊細で、すごくインスピレーションうけたの。

フランスでも人気のあるFrançois Champsaurは建築家でインテリア・デコレーターだけでなく、ファニチャーデザイナーとしても、作品をおおく残している。オブジェのようなテーブルとスツールをデザイン中。
「プラハの詩人」と呼ばれたチェコ出身の写真家、ヨゼフ・スデック(Josef Sudek)の本があるのが興味をそそられる。
フランソワのデザインした照明器具。シンプルなのに、固い意志をもつ印象。
なんだろう。なにになるんだろう。

田中:フランソワがHOTEL VERNET(ホテル ヴェルネ)のインテリアをデザインしたの覚えてるよ。パリ観光地のど真ん中だよね。

HOTEL VERNET は豪奢すぎないフレンチカジュアルでアーティスティックなデザイン。そしてすばらしいサービス。

インジー:そう。シャンゼリゼ通りとマルソー通りの間にあるホテル。凱旋門から5分くらいかな。パリの観光名所に囲まれた、おすすめスポットだわね。これぞパリ旅行!的な。

フランソワ(François Champsaur)スタジオにて。南フランス出身なので明るくてあたたかい人柄。

田中:フランソワのスタジオ、本当に素敵ね。インジーのお父さんの仕事で彼、エヴィアンの宮殿ホテルのインテリアをデザインしたよね。なんていうホテルだっけ?

インジー:The Hôtel Royal (エヴィアン ロワイヤル パレス)。

フランスでも人気があったイギリスのエドワード7世に捧げられた宮殿なの。

でた宮殿!エドワード7世はフランスの「ベル・エポック」と呼ばれた時代を象徴する大女優サラ・ベルナールと浮名を流した。当時のアーティストにインスピレーションを与えたサラ・ベルナールは「アール・ヌーヴォー」運動の中心にいながらミューズでもあった。

田中:エドワードジャケットのエドワード、だよね。エドワード7世考案、ディレクターズスーツは日本の定番スーツよ。あ、世界の定番スタイルか。本物のファッションリーダーだよね。

インジー:うん。エドワードのファッションスタイルは、ブリティッシュ・スタイル・スーツの原点ね。

贅沢でいながら、開けたウエルカム感もある。
そしてどこかファニーでフランソワらしいと思う。

田中:テディ・ボーイ(エドワード7世のファッションを誇張したスタイル、もしくは50’sの不良少年をこういう。イギリス国民に愛されたエドワードの愛称、テディに由来する。)は日本では今も健在よ。

代々木公園で踊ってる人たちいるでしょ。原宿の先の公園。あの人たちは、テディ・ボーイを継承してるよ。

このホテルの内装、すっごいモダンだね。宮殿の当時の建築を生かしながら、フレンチシックなデザインを取り入れて。

インジー: あっ!あなたの崇拝するミュージシャンのライブに行ってきたよ。PJ ハーヴェイ !! パリアートフェア中に。

インジーは猫耳といったが、たぶんブラックスワンのイメージじゃないかな。ブラックミニドレスのスリーブが大きく長くなってて、スワンの羽をイメージしてるような。

田中:なにそれー。いいなー!どこで?どんなん?

インジー:Le Zénithで。

彼女のスウェードのような声に、猫耳のヘッドピースとエレガントなブラックタイトドレスが、すばらしくマッチしてた。

田中:わー。おっきな会場だったんだ。

彼女、ニューアルバムだしたよね?昔の曲もたくさん歌った?

Le Zénithは音楽だけに限らず、
あらゆる種類のショーが繰り広げられる、パリの大箱会場。

インジー:みんなが聞きたい昔の曲に新しい曲を織り交ぜて、欲しいもの全部あげる!って感じのステージで、盛り上がったよね。

パワーに満ち溢れていて、独自のスタイルをもっている人は、年をとらないって思ったわ。

田中:自分のスタイルを持たないと、結局なんらかのカテゴリーに属して見える、ってことだよね。そのカテゴリーのひとつはやっぱり年齢、てことになるのかな。

PJ ハーヴェイ、渋谷Bunkamuraで来年ライブあるみたい。楽しみー!

次回につづく

インジーがめずらしくメイクをしているのできいてみたら、撮影でNobu Fujiwaraという日本人メイクアップアーティストと仕事した際、メイクしてもらったそう。Ôpos agency の写真家、Fabien Sarazinスタジオ にて。後ろの写真はWANG NINGDE。Fabienがパリアートフェアで数年前に購入。
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